天丼リミックス - thridWaveNeet

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映画「レディ・バード」懐かしく愛おしい、青春の「イタさ」が美しい。

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深刻な事態が起こっている。「週末には映画。」という、なんだか大人みたいな過ごし方が定番化してしまった。女子大生の趣味はカフェ巡りです。と同じくらいポップで、無難だ。映画は好きだし、他に良い週末の過ごし方が思いつくわけでもないのだけど。

映画を観たら感想のようなものを文章にしたくなる。つらつらその映画に対して自分の思考を書いていくのは、気分がいい。だけど、読む人にとっては退屈極まりないのはよく分かっている。こればかりはどうしようもない。

さて、先週見た映画は「Lady Bird」だ。

 どんな映画か単刀直入に言えば、思春期ど真ん中な女子高生がジタバタする。自らをLady Birdと名乗り(この時点でかなりイタい)愛情深くクソめんどい母親とバトルしたり、背伸びをしたり、泣いたりする。そのどれもが生々しく描かれている。

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上映中ずっと、まるで彼女の日記を隠れて読んでるかのようなリアルさに背徳感すら感じた。ダサい地元、貧しい実家、母親の期待、居心地の悪い高校、恋愛経験はゼロ。思い描く理想とのギャップに振り回される姿が、懐かしく、そして愛おしい。思春期の「イタさ」が、こちらが恥ずかしくなるくらいに伝わってくる。

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監督兼脚本のグレタ・ガーウィグは、自分が体験したそんな儚い「イタさ」を一本の映画で語り尽くした。大人ならみな経験しているんだろう。その時期を終えてしまったときに、振り返るとたくさんの事に気がつくということ。そして特に親との関係はそんな節があること。

 "Each scene you could always know how the daughter felt and how the mother felt, and not feel like either one was wrong, but they're missing each other." - Greta Gerwig

 「ぞれぞれのシーンで、娘と母親のそれぞれがどう感じているのか感じ取れるはずです。どちらかが悪いわけではなく、ただお互いの存在が欠け落ちてしまっているのです。」グレタ・ガーウィグ

グレタ・ガーウィグカリフォルニア州サクラメント出身で、主人公のレディ・バードの設定と同じだ。加えて、脚本の段階では「Mothers and Daughters」というタイトルが付けられていたらしく、妙に納得してしまった。

ちなみに、この映画にはキリスト教というもう一つの軸がある。とはいってもキリスト教を分かってないと映画が楽しめないとかそんな事ではない。というよりキリスト教に馴染みのない人が、最近のキリスト教ってこんな感じなんだっていうのを知ることができると思う。

だれにおすすめ!って言うのはないけど、遠く過ぎ去ってしまった自分の青春時代と、もう一度向き合うキッカケになると思う。観終わった直後に、大きな感動があるかといえば、ない。だけど、Lady Birdの追体験は、ゆっくりと時間をかけて記憶の中に染み渡っていく。

余談にはなってしまうのだけど、「レディ・バード」を制作した会社って、最近の映画業界でかなり注目を集めてるみたい。「A24」という制作会社なんだけど、2012年に創立なのにヒット作ばかりですごい。ソフィア・コッポラの「ブリングリング」、「エクス・マキナ」、「ムーンライト」とかとか。

 

レディ・バード」(Lady Bird)は2017年にアメリカ合衆国で公開されゴールデングローブ賞をはじめとした数多くの賞を受賞し高い評価を受けている。監督は女優と脚本家でもあるグレタ・ガーウィグ、主役のレディ・バードシアーシャ・ローナンが演じる。